3PLの新規荷主立ち上げを軽くするには|“出荷だけ”を切り出すという考え方
3PLやEC物流代行では、新規荷主の立ち上げ時に、出荷フローをどう組むかが大きな論点になります。
荷主からは、「この帳票を使いたい」「この送り状を出したい」「この作業方法で進めたい」といった要望が出てきます。しかし、その要望をそのままシステム化することが、必ずしも現場にとって最適とは限りません。
たとえば、ある3PL企業で、新規荷主案件について「一体型伝票を使いたい」という相談が寄せられた例があります。出荷条件を聞いていくと、一体型伝票だけを前提にするより、クラスタピッキングと梱包工程での送り状印刷を組み合わせる方が、全体に適していると判断しやすい内容でした。
ここで重要なのは、一体型伝票が良い・悪いという話ではありません。新規荷主の立ち上げでは、荷主の要望を出発点にしつつ、出荷フロー全体を見て、現場で回しやすい作業モデルに置き換える視点が必要になります。
親記事:出荷件数が増えると現場が乱れる理由|物流センターの出荷能力と作業設計の考え方
新規荷主の相談では、提案段階の見立てが問われる
新規荷主の立ち上げ相談では、荷主、3PL、システム提供側の関係を分けて考える必要があります。
荷主は3PLに出荷業務を依頼します。3PLは、その案件を自社の倉庫、人員、既存システムで回せるかを検討し、送り状発行、帳票出力、検品、配送EDI連携などの出荷管理についてシステム提供側へ相談することがあります。
特徴的なのは、こうした相談が新規案件の受託が正式に決まる前に来ることです。システム利用料は3PLにとって原価であり、荷主への請負料金に反映する必要があります。料金や運用の見通しが立たなければ、3PLは荷主に見積もりを出せません。
そのため、現場を見てから設計するのではなく、荷主から聞いている情報をもとに先に出荷フローの見立てを立てることになります。商品特性、荷姿、帳票、決済方法、配送便種をどう見るかに唯一の正解はありません。問われるのは、似た商材や業務でどのような運用が合いやすいかを読み、現場が回る形を描けるかどうかです。
3PLにとっての価値は、荷主から言われた通りに作業を請けることだけではありません。荷主が知らない現場視点をもとに、「この業務なら、この出荷フローの方が回しやすいのではないか」と提案できることにあります。
荷主が変わっても、出荷の骨格は同じ
荷主ごとに商品や帳票、配送条件は異なります。しかし、出荷作業の骨格は大きく変わりません。基本は次の流れです。
ピッキング → 検品 → 梱包 → 出荷
ここでいう出荷とは、倉庫から商品を出すことだけではありません。検品、梱包、送り状の貼付、配送会社への引き渡しなど、納品先へ届けるための一連の作業を含みます。
荷主が変わったときに変わるのは、この骨格そのものではなく、各工程のやり方です。
- 取扱商品・ビジネスモデル(EC、カタログ通販、BtoB など)
- 荷姿(小物中心か、大型商品や異形物が多いか)
- ピッキング方法・検品方法
- 帳票(指定帳票・複写伝票の要否、納品書の同梱可否)
- 決済方法(代引きの有無、払込用紙の要否)
- 配送便種(宅配便か、ポスト投函サービスか)
たとえばBtoBでは、今でも指定帳票や複写伝票が必要になる業界があります。一方で、EC出荷では納品書を同梱しない、またはデジタル納品書へ移行するケースもあります。立ち上げでは、共通する骨格と変わる部分を分けて見ることが重要です。
出荷だけを切り出すと、確認範囲を絞りやすい
新規荷主の立ち上げで難しいのは、画面に見える操作だけではありません。注意が必要なのは、画面に見えにくいロジックです。
在庫管理側には、在庫引当、引当優先順位、単位の扱い、欠品時の判断などがあります。これらは入荷管理や在庫管理を担うWMS側の領域です。初めて使うWMSや荷主指定のシステムで運用する場合、表面的な操作は理解できても、裏側の処理まで把握するのは簡単ではありません。
だからこそ、立ち上げ時には、入荷・在庫の領域と出荷作業の領域を分けて考えることが大切です。出荷管理だけを切り出せば、確認する範囲は、どの出荷データを取り込むか、どの配送会社・便種で出すか、どの帳票をどの工程で出すか、検品をどこで行うか、配送EDI連携できるかに整理しやすくなります。
SHIPPは出荷に特化したシステムとして、入荷・在庫を担うWMSと役割を分けて使えます。入荷・在庫はWMSで管理し、その出荷指示をもとに送り状発行、帳票出力、検品、配送EDI連携を組み立てる。役割を分けることで、新規荷主の立ち上げで「どこを確認すべきか」が見えやすくなります。
ケーススタディ|一体型伝票ではなく、別の出荷フローを提案した例
冒頭で触れた「一体型伝票を使いたい」という相談では、コストが大きな論点になりました。一体型伝票は専用の用紙を使うため、伝票そのものにコストがかかります。昨今は紙や印刷の価格上昇もあり、3PLにとって、出荷原価は荷主への請負料金や取引継続に直結します。
そこで、一体型伝票を前提にするのではなく、クラスタピッキングと梱包工程での送り状印刷を組み合わせる案を検討しました。クラスタピッキングは、似た注文をまとめてピッキングする方法です。その後、梱包工程で対象の注文に合わせて送り状を印刷すれば、事前に帳票を大量に揃える作業を減らせます。
タブレットを使ったペーパレス運用を組み合わせれば、紙のピッキングリストに依存しすぎない作業モデルになります。出荷データを取り込むと同時にピッキングを始められるため、立ち上がりも速くなります。結果として、一体型伝票よりも効率的で、伝票コストも抑えた運用に近づきます。
この例で大切なのは、「一体型伝票を使うかどうか」ではありません。荷主が希望する方法を出発点にしつつ、商品特性、帳票、配送条件、作業の流れを聞いたうえで、より適した出荷フローを提案することです。
一体型伝票や丁合作業の考え方は、別記事「一体型伝票とは|送り状・納品書を1枚にする前に見直したい丁合作業」で詳しく整理しています。ピッキング方法の選び方は「ピッキング方式の使い分け」も参考にしてください。
設定で済む変更と、個別対応になる変更を分ける
新規荷主の立ち上げでは、荷主ごとに違いがあるのは当然です。ただし、その違いのすべてが、開発を伴う個別対応になるわけではありません。
出荷データの取込項目、帳票のレイアウト、送り状を出すタイミング、検品方法、配送便種などは、設定や運用設計で吸収できる場合があります。線引きの目安は、汎用性があるかどうかです。他の現場でも使える内容なら設定や運用で対応しやすく、その荷主だけの独自要件は個別対応として検討します。
3PLにとって避けたいのは、荷主ごとの要望をすべて個別対応として受け、立ち上げのたびにコストと時間が膨らむことです。設定で対応できる範囲を増やせれば、荷主対応のたびにカスタマイズへ進む必要は小さくなります。
入荷・在庫はWMS、出荷管理はSHIPPという役割分担
SHIPPは、入荷管理・在庫管理ではなく、出荷管理に特化したシステムです。既存のWMSや基幹システムを活かしながら、出荷だけを切り出して設計することで、荷主ごとの違いを整理しやすくなります。
送り状発行は、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便・西濃運輸の宅配4社に対応しています。宅配大手4社に対応したクラウド型はSHIPPだけです。複数の配送会社を扱う3PLでは、マルチキャリアの送り状発行を出荷管理の中でまとめて扱えることが、新規荷主の立ち上げ後の運用にも効いてきます。
配送会社ごとの送り状発行の考え方は「複数の配送会社の送り状をまとめて発行する」でも整理しています。WMSと出荷管理システムの違いや選び方は「出荷管理システムの選び方」も参考になります。
まとめ:新規荷主の立ち上げでは、出荷フローを分けて考える
3PLの新規荷主立ち上げでは、荷主の要望をそのまま作業フローに落とし込むだけでは不十分です。
荷主が変わっても、出荷作業の骨格は大きく変わりません。変わるのは、ピッキング方法、検品方法、帳票、決済、配送便種など、各工程のやり方です。その違いを整理せずにすべてを個別対応として受けると、立ち上げのたびに確認範囲が広がります。
入荷・在庫はWMS、出荷管理はSHIPPというように役割を分ければ、出荷領域に絞って設計しやすくなります。新規荷主ごとにすべてを作り込む前に、まず出荷フローを分解し、共通する骨格と変わる部分を見極めることが出発点になります。