複数荷主の出荷を同じ日に回すには|締め時間から逆算する作業の組み立て
物流センターの改善支援で現場に入ると、朝礼の時点でその日の終了時刻を十五分程度の誤差で言い当てる管理者に出会うことがあります。数としては多くありませんし、特別に新しい設備が入っているわけでもありません。違いがあるのは、作業実績にもとづく生産性の管理とKPIの設計という、外からは見えない部分です。
終了時刻を朝に言えるかどうかは設備ではなく管理の問題で、複数の荷主を預かる倉庫では、この精度が締め時間との勝負に直結します。この記事で想定するのは、ひとつの倉庫を一社の3PL事業者が運営し、複数の荷主を受託している現場です。出荷した荷物は積み合わせで同じトラックに載ります。運送会社との契約の持ち方はケースによりますが、集荷便は共通です。
管理は荷主ごとに縦に分かれ、締め切りは集荷便で横につながる。これが当日オペレーションの前提です。物量が増えて現場が乱れる話は出荷能力とバッファの考え方で扱いました。ここで扱うのは、同じ物量でも締め時間の並びが違えば当日の組み立てが変わるという、時間側の制約です。
組み立ては荷主ごとに縦、締め切りは集荷便で横につながります
荷主ごとに管理者を置くのは、業務量の少ない荷主でも、見なければならない内容が多い荷主と変わらないからです。当日の物量と内容の把握、人の配置、工程の進捗、締めへの着地。規模が小さいからといって、見る項目が減るわけではありません。大きい荷主でも小さい荷主でも、本質的にやることは変わらないということです。
そのため、当日の組み立ては荷主ごとに独立して行われ、センター長が全荷主の作業を毎朝まとめて組み直す形にはなりません。一方で、締め切りだけは荷主をまたいで共通です。大型の倉庫では出荷場やホームが荷主ごとに分かれることもありますが、集荷時刻は動きません。ある荷主の遅れは、出荷場の混雑や積み込みの順序を通じて他の荷主の締めに影響します。
新しい荷主を受け入れるときに既存荷主の締めと重ねて確認しておくべきなのは、この合流点があるからです(3PLの新規荷主立ち上げを軽くするには)。
毎朝決めているのは「今日の面子で何時終わりを目指すか」です
作業方法は決まっているので、朝に決めることは限られます。今日の仕事の量と内容を見て、出勤しているスタッフで何時の終了を目指すか。どの業務に何人必要か、何時にどの工程へ人を移すか。多くの現場では経験的に判断しています。
ここで差が出るのは管理者の力量です。同じ物量、同じ人数でも組み立ては変わります。経験による判断は速く、精度も低くありませんが、その精度がどこから来ているのかは本人以外には見えにくいままです。
終了時刻の計算で難しいのは、割る数のほうです
計算式そのものは単純です。工程ごとの物量を人時生産性で割れば必要な人時が出て、それを投入人数で割れば所要時間が出ます。難しいのは、この二つの数字を朝の時点でどれだけ正しく置けるかです。
まず、物量の数え方が工程ごとに違います。バーコード検品は通常、一点ずつスキャンするため、作業時間を左右するのは出荷件数ではなく出荷総点数です。ピッキングは移動と探索に、梱包は箱数と同梱物に引かれます。一日の出荷を「件数」というひとつの数字で代表させた時点で、計算は外れはじめます。
次に、同じ物量でも人時生産性は一定になりません。
- 同じ点数でも、大きい商品が多い日と小さい商品が多い日では、一時間あたりの処理量が変わります
- 一件あたりの点数が変われば、件数が同じでも総点数は変わり、工程ごとの負荷の配分も変わります
- 作業者の顔ぶれによっても変わります。人数が同じでも、熟練度の構成が違えば結果は変わります
そして、終了時刻を決めるのは平均ではなく、最も詰まる工程です。全体を均した生産性で割ると、その工程が数字の中に埋もれます。精度が高いか低いかは、工程ごとに分母を持ち、オーダーの中身が生産性に反映されているかどうかで決まります(人時生産性とは)。
逆算の起点は、集荷時刻と出荷指示の到着時刻です
複数の運送会社を使っていれば、集荷時刻は会社ごとに異なります。締めの早い会社の分から先に用意し、その集荷に乗せる。倉庫の作業スケジュールは、この締め切り時刻から逆算して組み立てられます。
もうひとつの起点は上流にあります。荷主からの出荷指示データです。朝一番に受信し、午前中にもう一度受信する運用は珍しくありませんが、この受信が予定より遅れることもよくあります。
そのため、遅れた場合の扱いを先に伝えておく必要があります。データが遅れれば出荷も遅れ、一部は翌日になる可能性がある。この牽制がないまま受けていると、遅れて届いたデータの分まで当日中に押し込むことが前提になっていきます。送り状の発行をどの時点で終わらせるかも、この逆算の中で決まります(複数配送会社の送り状発行)。
毎日締めに追われるのか、その日だけ崩れるのか
締めに追われる状態には二種類あります。特需のように出荷量が跳ね上がる場合を別にすれば、慢性的に追われている現場は、計算が外れているのではなく、その前提になる生産性が安定していません。多くの場合、それはピッキングに現れます。
- ピッカーの成熟度によって、生産性のばらつきが大きい
- ロケーション管理に問題があり、商品を探す時間が発生している
- 指定のロケーションに在庫がなく入荷場にあるが、その状態がデータでは分からない
- ピッキングの効率が悪く、だらだらとした作業が常態化している
いずれも、その日の段取りでは取り返せません(ピッキング4方式の使い分け)。
もう一種類は、その日だけ崩れる場合です。イレギュラーの種類は、現場が変わってもそれほど変わりません。
- **変更・キャンセル。**何時まで受け付けるかを決め、工程ごとの変更処理フローを確立しておきます。進捗によっては、そのまま出荷する判断も選択肢です
- **誤出荷などのクレーム対応。**再出荷時にどの検品を行うかを決め、優先順位を上げた別フローで処理できるようにしておきます(バーコード検品と誤出荷防止)
- **欠品。**出荷した商品の在庫残をピッキング後に確認し、ロケーションのメンテナンスを日々の業務に組み込みます
- **スタッフの欠員。**ジョブローテーションなどで多能工化を進め、業務の属人化を減らしておきます
締めに追われた日、最初に出てくるのは残業です
締めに間に合わないと分かったとき、最初に選ばれるのは残業です。応援投入は、その日の昼を過ぎてからでは選択肢になりません。派遣会社に連絡しても当日の手配はできず、社内の他業務から回すしかありませんが、その業務も人が余っているわけではありません。
翌日回しを計画的に行える企業は、この点で有利です。どこまでを当日に出し、どこからを翌日に回すかが荷主と共有されていれば、翌日回しは事故ではなく運用になります。その合意がないまま現場だけで抱えると、毎日の残業として吸収され続けます。
「今日中に出して」への答えは、書面にあるかどうかで決まります
荷主からの追加依頼を受けるか翌日に回すかは、原則としてルール化されているかどうかで決まります。SLAと呼ばれるサービスレベルを荷主と書面で交わし、緊急の追加を事前に取り決めておくかたちです。
在庫型センター(DC)であれば、当日入荷した商品をその日の出荷に乗せるか、当日出荷件数の上限、取り決めを超える作業の手数料などが項目になります。
SLAの概念がない現場では、その時々の状況で判断することになります。**担当者間の個人的な判断は、後々、契約そのものの歪みとして現れます。**当日の判断に見えて、実際には条件設計と採算の問題です(荷役費と設計余白)。
締め時間の設計は、出荷側の仕組みの前提でもあります
荷主の構成や運送会社の組み合わせが変われば、締めの並びも当日の作業順序も変わります。このとき、出荷の流れを変えるたびにシステムの改修が必要だと、現場の判断に仕組みが追いつきません。
SHIPPは出荷フローの切り替えを「作業モデル」の切り替えで行う設計です。送り状はヤマト運輸・佐川急便・日本郵便・西濃運輸の宅配大手4社に対応し、ブラウザの操作だけでプリンターから出力できます。一体型伝票は、西濃運輸を除く3社が対象です(一体型伝票と丁合作業)。
また、SHIPPは入荷管理や在庫管理を持たず、範囲を出荷に絞っています。在庫は既存のWMSや基幹システムに残し、出荷だけを切り出して組み替える考え方です(WMS刷新の難しさと出荷の切り出し、出荷管理システムの料金が読みにくくなる理由)。